千葉セクション問題

2018年7月10日の記者会見資料

千葉セクション問題

趣 旨

2015年 INQUA (国際第四紀学連合)名古屋大会の公式行事である国際現地討論会(以下「国際現地討論会」と略す)において、ねつ造・改ざんされた古地磁気データにより露頭説明を行った研究者グループにより申請された日本の GSSP 候補の申請は取り下げるべきである。

国際現地討論会において科学者としては許されない

データのねつ造・改ざんによる説明が行われた経緯

データのねつ造・改ざんは、GSSP 候補地である千葉県市原市養老川沿いの田淵露頭で国際現地討論会の際の古地磁気測定結果の説明に関連して行われた。田淵露頭では、目に見えない古地磁気測定結果(逆磁極点・正磁極点・磁化方位不安定点)を試料採取孔に色別表示杭(逆磁極点(赤)・正磁極点(緑)・磁化方位不安定点(黄))で示された。その際に以下のことが行われた。

ねつ造

古地磁気測定結果の表示にあたり、田淵露頭の下半部は田淵露頭の測定結果が使用されたが、田淵露頭の上半部(Byk-E 凝灰岩層の上 55cm から上方)は、田淵露頭から
1.7km 離れた場所にあたる柳川露頭の測定結果が用いられた。つまり、田淵露頭の測定結果表示では、上半部は他の地域の測定結果を利用したねつ造行為である。

改ざん

田淵露頭で、ねつ造表示された色別表示杭がさらに2015年 INQUA 名古屋大会の期間中に下から上に向かって赤色杭帯(松山逆磁極期)・黄色杭帯(極性遷移帯)・緑色杭帯(ブリュンヌ正磁極期)として3帯にきれいに整理してしまった。すなわち、赤色杭の並びの中にあった黄色杭を赤色杭に、緑色杭の並びにあった黄色杭を緑色杭に変えさせた改ざん行為である。

ねつ造・改ざんによる露頭表示の経緯

2013年8月~9月

Bらにより田淵露頭において Byk-E 凝灰岩層から地層の厚さ約 10m 下方から、Byk-E 凝灰岩層から厚さ 45cm 上方までの古地磁気測定試料採取が行われた。

2014年7月8日

Byk-E 凝灰岩層から上方については、古地磁気測定試料採取孔は2013年9月13日と変化はない。

2015年2月28日

Byk-E 凝灰岩層から地層の厚さ165cm上方までの間を厚さ10cmおきの古地磁気測定試料採取孔が増えていた。つまりByk-E凝灰岩層の上5つまでしかなかった試料採取孔が更に上まで(165cmまで)増えていた。

2015年6月22日

国際現地討論会の準備として大学教授のAより田淵での古地磁気測定結果が古関東深海盆ジオパーク推進協議会(以下、協議会と呼ぶ)の一部会員に送られた。この時に意味不明の文面あり。「Byk-E の上にはダミーの孔があいている。」(メール:Aから協議会メンバーへ田淵の古地磁気データ(Byk-E 凝灰岩層の上45cm から下方)と別の地域の古地磁気データ(Byk-E 凝灰岩層の上55cmから上方)をダミーの孔へ表示する指示が含まれていた。学生を指導する大学教授が偽装をあからさまに指示するとは考えられないため、現地討論会当日には、Byk-E 凝灰岩層の上55cmから上方については、必ず採取した試料の測定結果を示し説明するものと理解した)。

2015年6月26日

協議会メンバーがAからのデータに従い試料採取孔の脇に古地磁気測定結果を色テープで貼る(赤:逆磁極点,黄:磁化方位不安定点,緑:正磁極点)。

2015年7月23日

田淵町会の方々と協議会メンバーは、国際現地討論会の準備として、露頭見学路の整備、草刈りを行った。協議会メンバー(楡井ほか)は試料採取孔の脇に色別表示杭を打ち込んだ。

2015年7月29-30日

協議会メンバー代表(楡井)が、INQUA名古屋大会の会場で、国際現地討論会に係わる田淵露頭での古地磁気測定結果の色別表示杭について、古地磁気説明担当者の B に現地の状況写真を見せながら「この表示で良いのか」と確認。その際に、Bは、「このデータは、誰からのものか?」と質問した。楡井は、Bを指導してきたAからのデータとも言えず、Bの質問に返答できなかった。そこで、楡井は、改めてどうすれば良いのかを B に尋ねた。その結果、Bから一部の色別表示 杭の色の変更を指示された(29日)。露頭現場ではその指示どおりに、楡井と協議会メンバーで色別表示杭を打ち直すこととなった。楡井は、田淵露頭現場で色別表示 杭を打ち直す前に、露頭現場から確認のため Aの携帯に数回電話をかけるがつながらなかった。そこで、携帯電話で名古屋大会の会場にいる Bに、Aとの確認の連絡が取れないがBの指示どおりに色別表示杭を打ち直すことを再確認した。Bによれば、Aとの確認はとれているので問題ないとのことであった。最終的には、古地磁気説明担当者の B の指示通りに、楡井と協議会メンバーはそれぞれの色別表示杭を打ち直した(30日)。

2015年8月4日

A・Bらは国際現地討論会において田淵露頭で設置した古地磁気データ のねつ造・改ざんされた色別表示杭により「ここが古地磁気の逆転したところである。」と説明。

2015年8月24日

国際現地討論会での古地磁気データのねつ造・改ざん問題に関する会議において、Aが田淵のByk-E凝灰岩層から上へ6つ目(Byk-E凝灰岩層から上55cm)の孔から上方のものは田淵のデータではなく他の場所(柳川)のデータであることを認めた。

2016年3月5日

馳文科大臣が田淵露頭を視察(町会や協議会側に事前通知なし)。この際、Bは国際現地討論会の際に田淵露頭に設置した古地磁気データのねつ造・改ざんによる色別表示杭で大臣に説明している様子がニュースで放送された。

2017年6月7日

千葉の地層を国際標準として申請発表の報道(公式申請書は未公表)。当協議会と申請者グループとは、2015 年 8 月まで、All Japan で GSSP の獲得を目指し協力してきたが、申請者グループは 2015 年 8 月の露頭に設置した古地磁気データのねつ造・改ざんによる色別表示杭で国際現地討論会の参加者へ説明したほ か、2016 年 3 月には地元住民や地権者の許可を得ず破壊的な試料採取を行った。申請者グループの行動に倫理的な問題が有った為、当協議会は申請者グループと一線を画す事にし、偽装行為を告発するに至った。

取り下げるべき理由

❶ この国際現地討論会は 2015 INQUA 名古屋大会(開会式に天皇・皇后両陛下ご臨席)の公式行事の一環である。そこでのねつ造・改ざんされた古地磁気測定データによる説明行為は社会倫理・科学倫理に反する。

❷ この国際現地討論会において、GSSP の選定に関わる参加研究者に、ねつ造・改ざんされた古地磁気測定データでの説明行為は科学倫理に反する。なお、現地討論会とは現地の実際の地質の状況や、試料を採取した位置とその事実データを確認し議論する場である。

❸ この国際現地討論会において、千葉セクションと GSSP で競り合う立候補地があるイタリアの研究者達へねつ造・改ざんされた古地磁気測定データでの説明行為は、国際的な科学倫理や社会正義に反する。

❹ 教育の要である文部科学大臣へねつ造・改ざんされた古地磁気測定データでの説明行為は、社会倫理・人間倫理に反する。

❺ 科学的な事実認定を行う場において、ねつ造・改ざんされた古地磁気測定データで説明しても構わないという不正行為は、学童・生徒・学生達への教育倫理に反する。

❻ 国際会議でのねつ造・改ざんされたデータに基づく説明は、日本国の国際的信用を失わせることになる。

❼ ねつ造・改ざんされたデータに基づく現地説明は、国内外の地質科学技術の信用を失墜させることになる。

❽ 科学者は、論文成果の前に人間としての倫理・道徳を守ることが重要で、それをないがしろにした場合は、科学者は市民からの信用を無くすことになる。

千葉セクションの偽装問題の今後と千葉セクションのあらたな「かたち」の提案

❶ データのねつ造・改ざんに関わった地球科学系以外の理系・文系・司法系で完全に中立的な専門家からなる第三者調査委員会をもうけ、科学データのねつ造・改ざん表示に関する真相を究明し、公表し、ねつ造・改ざんの防止に向けた議論を活発にすること。

❸ 日本・イタリアのGSSP申請者達は相互信頼と真実を求める爽やかな地質科学者精神の維持者でなければならない。国際現地討論会の際に古関東深海盆ジオパーク推進協議会は「GSSPがイタリアに決定されても、日本に決定されても、爽やかに祝おうではないか」という両国の学術・文化の友好の絆となる両国旗を田淵会館前に掲揚した。その掲揚は、審査委員、日本・イタリアをはじめとした国内外の研究者、田淵町会や協議会の方々によって行われた。この国際学術・文化の友好の絆を強くすること。

❸ データのねつ造・改ざん行為のあった日本の申請者グループのGSSP取得権が剥奪されることは学術的観点からも自明であると協議会では判断している。本来、この問題はIUGSによる審査以前に国内で解決すべき問題であったが、申請書内容は非公開であり、国際審査過程も非公開とされていた。そのような非公開条件下で発生したデータのねつ造・改ざん行為は、国際的科学活動にとって深刻な現象である。今後、このような国際審査の在り方を議論していく必要がある。

❹ 古関東深海盆ジオパーク推進協議会は、イタリアの2候補地(モンタルバーノ・ヨニコとヴァレ・デ・マンケ)でも試料採取・論文表現・現場展示等にデータのねつ造・改ざんに関する第三者調査委員会の審査を行うことを提唱する。

❺ 古関東深海盆ジオパーク推進協議会では、田淵町会の方々と20年以上に及ぶ田淵露頭周辺の研究と環境観光化を図ってきた。2015年の国際現地討論会で結ばれた日本・イタリア両国の学術・文化の友好の絆として「日本・イタリア学術・文化友好の小路」を整備する。

❻ 科学的倫理は我々の生活を便利で豊かなものとし安全を保障する。そして、この科学倫理こそが子供達に未来の夢を与えることができる。