千葉セクション問題

「チバニアン」GSSP提案申請書に用いられた論文に関する研究不正の疑いについて

千葉セクション問題

研究不正

本協議会では2019年11月から当ホームページにて
・ GSSP(国際標準模式層断面及び地点)提案申請書に用いられた論文に対する疑問点
・ 上記不正の疑いについて、提案申請を支持した日本地質学会等の各学術団体、および国際地質科学連合(IUGS)の日本委員会である日本学術会議に質問状を送付
・ 論文不正の疑いに関する告発内容と、被告発機関における予備調査委員会の回答について
等を記事として掲載しております。
 本記事では、一連の論文に対する不正の疑いの内容、およびGSSP審査に及ぼしたと考えられる影響についてまとめております。

本記事に関する質問等はinfo〇paleokantogeo.org(「〇」を「@」に変えて下さい)までお寄せください。

 なお、本記事に掲載している研究不正(論文不正)の疑いにつきまして、GSSP申請グループリーダーである岡田誠教授(茨城大学)は『捏造とする意見は、学術的に反論できるものばかり』と述べております(週刊新潮,2020年2月6日付記事~「チバニアン」を救った市原市のウルトラC市条例~より(外部リンク))。
 しかし2023年10月現在に至るまで、この記事で述べる具体的な論文の齟齬・不正の疑いに対して、GSSP申請グループから学術的な反論は寄せられておりません。
 また、本協議会はGSSP提案申請に関する論文・提案書に支持を表明した日本学術会議地球惑星科学委員会IUGS分科会(GSSP審査を実施した国際地質科学連合IUGSの日本委員会)に対して論文不正の疑いに関する質問状を送付しております。
 このほか、論文・提案申請書に支持を表明した日本地質学会、地球電磁気・地球惑星圏学会などの学術団体にも同様の質問状を送付しておりますが、現在に至るまでこれら団体から意見・反論は寄せられていない事実も予め申し添えます。


 近年海外、特にnature誌やscience誌など有力な学術誌においても「研究公正」にまつわる諸問題が指摘されております。
 本協議会は、チバニアンGSSP提案申請に関わる一連の論文に対して、正しいデータ・図に基づき論文を書き直すとともに、正確なデータを用いてGSSP提案申請書を出し直し、2017年から2020年にかけて行われた国際委員会における審査もやり直すべきであることを提唱しております。


1.GSSP提案申請書に用いられた論文について

 現在の千葉セクション(市原市田淵、養老川沿いの露頭:写真)における古地磁気の逆転現象は、古くは会田(1997)等の研究により確認されてきました。
 茨城大学や国立極地研究所などの研究者が加わり、新たに発足したGSSP申請グループ(以下「申請グループ」)による千葉複合セクションの調査は2013年から本格的に始まり、主に以下の論文が執筆され、GSSP提案申請書とGSSP公式論文に用いられてきました。

Suganuma et al.(2015)
Okada et al.(2017)
Suganuma et al.(2018)
Simon et al.(2019)
Haneda et al.(2020b)
Haneda et al.(2020a)
Suganuma et al.(2021):GSSP公式論文

」印の4論文は研究不正の疑いがあり、本協議会が告発対象としている論文です。

 GSSPは2017年から2020年にかけて4段階の審査を経て決定されておりますが、各審査段階で申請グループが提出した提案申請書、および国際委員会による審査内容は2023年現在も非公開とされております。
 本協議会が研究不正の疑いを指摘する箇所は、全てGSSP審査に影響を及ぼしたことが疑われます。そこで本記事では、上記「」印の4論文に関する図表の齟齬と不正の疑い、および疑いを指摘する箇所がどの様な形で審査に影響を及ぼしたと考えられるのかを解説しております。

 本協議会が指摘する研究不正の疑いは、大きく分けて
1)古地磁気グラフと層序の改ざん(古地磁気逆転年代決定に関する不都合なデータの削除)
2)気候変動の指標とされる酸素同位体比データの捏造・改ざん
3)試料採取場所の改ざん、および告発~予備調査後の「不正を疑う証拠の隠滅」

の3つに区分されます。
 各論文における不正行為の疑いの概要は下記一覧の通りになります。

 次のページより、1)古地磁気 2)酸素同位体比 3)試料採取場所 について、論文で確認できる齟齬、そこから生じる研究不正の疑い、およびGSSP提案申請に及ぼしたと考えられる影響について詳細を説明いたします。

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